もし、投資を始めたタイミングが最悪だったらどうなるのでしょうか。
今回は、
ITバブル崩壊直前の2000年ごろから20年間
という、かなり厳しい条件で考えてみます。
しかも投資先は、
- S&P500
- QLD(NASDAQ-100の日次2倍)
- TQQQ(NASDAQ-100の日次3倍)
の3つ。
毎月1万円、3万円、5万円、10万円を淡々と20年間積み立てた場合、最終的な資産はいくらになったのか。
そしてもう一つ。
そこに到達するまで、一体どれだけ恐ろしい暴落を耐えなければならなかったのか。
今回は「最終金額のデカさ」だけではなく、レバレッジ投資の怖さも含めて見ていきます。
この記事でわかること
・ITバブル崩壊直前から20年間積み立てた場合の資産額
・毎月1万・3万・5万・10万円でどこまで差がつくのか
・S&P500とQLD、TQQQの違い
・TQQQが暴落するとどれほど減るのか
・「3倍レバレッジ=長期リターンも3倍」ではない理由
・暴落から始まる積立投資が意外と強い理由
まず結論。20年間積み立て続けると、とんでもない差になった
今回参考にした過去の積立バックテストでは、2000年から約20年間積み立てた場合、投資元本に対する最終資産はおおむね、
S&P500:約2.3倍
QLD相当:約9倍前後
TQQQ相当:約30倍
という結果になっています。
2000年1月〜2019年12月のバックテストでは、S&P500が元本の2.31倍、NASDAQ-100の2倍モデルが9.14倍でした。別の2000年5月〜2020年7月の3倍モデルでは、TQQQ相当が30.07倍という結果になっています。期間やモデルが完全に同一ではないため厳密な横並び比較ではありませんが、20年間積み立てた場合の「規模感」を見るにはかなり面白いデータです。 (日々の生活をがんばるブログ)
これを毎月の積立額に換算してみます。
| 毎月の積立 | 20年間の元本 | S&P500 | QLD相当 | TQQQ相当 |
| 1万円 | 240万円 | 約554万円 | 約2,194万円 | 約7,217万円 |
| 3万円 | 720万円 | 約1,663万円 | 約6,581万円 | 約2.17億円 |
| 5万円 | 1,200万円 | 約2,772万円 | 約1.10億円 | 約3.61億円 |
| 10万円 | 2,400万円 | 約5,544万円 | 約2.19億円 | 約7.22億円 |
※QLD・TQQQについては設定前の期間を含むため、NASDAQ-100の過去データから作った仮想レバレッジモデルを含みます。
※上表は公開されている複数の約20年バックテストの倍率を積立額に比例換算した参考値です。為替・税金・売買コストなどを完全に同条件化した精密比較ではありません。
それにしても……
毎月1万円のTQQQ相当でも約7,200万円。
毎月3万円なら2億円を超え、毎月10万円なら7億円を超える計算です。
数字だけ見ると、
「もう全部TQQQでええやん」
となりそうです。
しかし、この数字だけを見てTQQQ最強と結論づけるのはかなり危険です。
なぜなら、その途中経過がとんでもないからです。
TQQQは「7億円になる商品」ではなく「99%下がる可能性がある商品」
今回のスタート地点はITバブル崩壊直前。
NASDAQ-100は、その後とんでもない暴落を経験します。
そしてTQQQはNASDAQ-100の日次3倍を目標にする商品です。
TQQQそのものは2010年に設定されたため、ITバブル崩壊当時の実績は存在しません。
そこでNASDAQ-100の実際の日次データを使って、TQQQが当時存在したらどうなったかを再現すると……
ITバブル崩壊時の最大下落率は約99.9%
というシミュレーションになります。 (GitHub)
100万円が、
約1,000円
の世界です。
1,000万円なら、
約1万円。
ほぼ全損です。
「20年後には数億円になりました!」
だけ見せると、とんでもなく魅力的に見えます。
でも実際には、その途中で
資産がほぼ消滅するような局面を耐える必要があった
ということです。
しかもこれは昔だけの話ではありません。
実在するTQQQも2022年には年間で**−79.03%**を記録しています。 (ProShares)
一方、QLDも決して穏やかな商品ではありません。
2006年の設定後に経験したリーマンショックでは、最大ドローダウンが約83%に達したというデータがあります。 (ポートフォリオスラブ)
つまり、
2倍だからちょっと怖い。3倍だからもうちょっと怖い。
くらいの差ではありません。
80〜99%という暴落を、本当に自分のお金で耐えられるか。
ここがレバレッジ投資で一番重要だと思います。
それでも積立投資では、ITバブル崩壊がむしろ追い風になった
ここが今回のシミュレーションで一番面白いところです。
ITバブル崩壊直前に100万円を一括投資して、その後何もしなかった場合。
これはかなり悲惨です。
しかし今回は違います。
毎月ずっと買い続けています。
株価が暴落すると、
同じ1万円でも買える口数が増えます。
さらに下がれば、もっと買えます。
そして2000年代前半のNASDAQは長期間低迷しました。
積立投資をしている人からすると、この時期は
将来値上がりする資産を安値で何年間も買い続けられた期間
でもあります。
実際、2000年からの積立バックテストでも「投資開始直後に大暴落することが、積立投資ではむしろ有利に働く」ことが指摘されています。 (日々の生活をがんばるブログ)
これはかなり重要です。
同じ暴落でも、
投資開始1年目の暴落
と
20年間積み立てて資産が1億円になった後の暴落
では意味がまったく違います。
前者なら安く買えます。
後者でTQQQが80%下がれば、
1億円が2,000万円です。
積立初期の暴落には「買い場」という側面がありますが、資産形成後半の暴落は単純に破壊力が大きくなります。
「3倍レバレッジだから20年後も3倍」ではない
ここはレバレッジ商品を考えるうえでかなり重要です。
TQQQは、
NASDAQ-100の長期リターンを3倍にする商品ではありません。
目標としているのは、
NASDAQ-100の“1日”の値動きの3倍
です。
QLDも同じで、日次2倍です。
ProShares自身も、1日を超える保有期間では実際のリターンが2倍・3倍から大きく乖離する可能性があると説明しています。 (ProShares)
簡単な例で考えてみます。
100円の指数が、
1日目:+10%
2日目:−9.09%
動いたとします。
100円 → 110円 → 100円
なので、指数は元通りです。
ところが2倍レバレッジなら、
100円 → 120円 → 約98.2円
になります。
3倍なら、
100円 → 130円 → 約94.5円。
元の指数は±0%なのに、
2倍は約−1.8%、3倍は約−5.5%
になってしまいます。
これが日次リセットと複利による「経路依存性」です。
値動きが激しく上下すると、いわゆるボラティリティ・ドラッグが大きくなります。
反対に、NASDAQが比較的スムーズに上昇し続ける相場では、複利がプラス方向に働き、
長期リターンが単純な2倍・3倍を上回ることもあります。
だから、
「NASDAQが20年で10倍なら、TQQQは30倍」
という計算はできません。
2000年のTQQQは実在しない。今回のバックテストはどう作っている?
ここも誤解のないように書いておきます。
QLDの設定は2006年6月。
TQQQは2010年2月です。 (ProShares)
したがって、
2000年からQLD・TQQQを買った実績は存在しません。
今回はNASDAQ-100の実際の日次値動きを使い、
「もし当時QLDやTQQQが存在したら?」
を再現するバックテストです。
より精密な長期合成データでは、単純にNASDAQの日次変動を2倍・3倍するだけではなく、
・運用経費
・借入金利
・スワップコスト
まで考慮して過去のQLD・TQQQを再構成する方法も公開されています。
特に3倍レバレッジは、元本1に対して約2の追加エクスポージャーを持つため、金利が高い時代ほど資金調達コストの影響が大きくなります。 (GitHub)
つまり、
「NASDAQのリターンを毎日3倍しただけ」では、本当のTQQQをやや楽観的に見積もってしまう可能性があります。
今回の数字は未来を保証する数字ではなく、
「実際のITバブル崩壊やリーマンショックを通過したら、レバレッジ積立はどんな世界になるのか」
を見るためのシミュレーションとして考えてください。
ちなみにS&P500とQLD・TQQQは完全な公平比較ではない
もう一つ注意点があります。
S&P500とQLD・TQQQでは、
そもそもの投資対象が違います。
S&P500は米国大型株約500社。
QLDとTQQQはNASDAQ-100です。
つまり今回の結果の差には、
① NASDAQ-100の方がこの20年間強かった
② そこに2倍・3倍のレバレッジをかけた
という2つの要因が混ざっています。
純粋に「レバレッジをかけるとどうなるか?」だけを比較するなら、
QQQ vs QLD vs TQQQ
で比べる必要があります。
これは別記事で詳しく検証したいと思います。
僕がこのシミュレーションで一番おもしろいと思ったこと
今回の結果だけを見ると、
S&P500:約550万円
QLD:約2,200万円
TQQQ:約7,200万円
※毎月1万円の場合
と、圧倒的な差になりました。
毎月10万円なら、
S&P500:約5,500万円
QLD:約2.2億円
TQQQ:約7.2億円
です。
レバレッジの破壊力はすさまじい。
ただ、それ以上に印象的なのは、
そのリターンを得るために耐えなければならなかった下落の大きさ
でした。
TQQQは、
「20年持てば儲かる夢の商品」
というより、
途中で資産がほぼ消えても積立を続けられた人だけが、結果的に巨大なリターンを得られた可能性のある商品
と表現した方が近い気がします。
僕自身もS&P500とレバレッジNASDAQを両方持っています。
「レバレッジには夢がある」と思う一方で、
レバレッジ比率を上げるほど、リターンだけではなく“続けられるか”の重要性が大きくなる。
今回の数字を見て、改めてそう感じました。
まとめ
ITバブル崩壊直前というかなり厳しいタイミングから20年間積み立てても、過去のバックテストではレバレッジNASDAQが非常に大きな最終資産を残すケースがありました。
毎月わずか1万円でも、TQQQ相当のシミュレーションでは最終的に7,000万円を超える規模になります。
一方で、
途中では80%、90%、場合によっては99%級の下落があり得ます。
ここを無視して最終金額だけを見るのは危険です。
そして、
2倍・3倍レバレッジだから、長期リターンも単純に2倍・3倍になるわけではありません。
日次リセット、複利、値動きの順番、ボラティリティ、資金調達コスト。
これらすべてによって最終結果が変わります。
だからこそレバレッジ投資では、
「一番リターンが高い商品はどれか?」
だけではなく、
「80%下がっても自分は積立を続けられるのか?」
まで考える必要があると思います。
次回は同じ条件で、
「10年間ならどうなる?」
を検証します。
さらに別の記事では、
30年間積み立てた場合、S&P500・QLD・TQQQの差がどこまで広がるのか
も検証してみます。

